変形性股関節症は臼蓋(骨盤側の股関節の受け皿)と大腿骨頭(太ももの骨のボール状の形状をした先端部分)の間で変性と痛みを起こす疾患です。
坂井ら監訳 プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論運動器系第二版 p420 医学書院
女性に多く、先天的な臼蓋形成不全などに伴って発症することが多いとされていましたが、近年では加齢・日常の負荷による変性など、先天的ではなく発症する症例が増えています。
これは変形性股関節症だけでなく他部位の疾患でも言えることですが、レントゲン像と実際の痛みの状況は必ずしも相関する訳ではなく、軽度の変形でも激痛の場合もあれば変形が進行した状態でも痛みは少ない例もあります。
しかし、変形が進んでいる例では股関節の可動域(動かせる範囲)は少なくなっている例が多いです。
さて、今回のテーマ『変形性股関節症とトレーニング』ですが
1.姿勢と変形性股関節症
股関節は前外方に開いている形状です。これは四つ這い動物から二本足歩行に進化していく過程の名残です。
ですので股関節はそもそも完全に安定した構造ではありません。その股関節に対して姿勢不良が続くと股関節不安定かつ多大な負荷がかかり、変性と痛みが起こることとなります。
姿勢の重要なポイントとしては骨盤が後傾(骨盤が後ろに倒れて背中が丸まっている姿勢)しているかどうかです。
骨盤が後傾すると臼蓋と大腿骨頭の適応している面が浅くなり、股関節の安定性が悪くなります。
林典雄ら 整形外科運動療法ナビゲーション 下肢・体幹p14 メジカルビュー社
そうなると股関節内の負荷がかかる場所と、かからない場所が不均衡になり、負荷がかかっている面には大きな圧がかかることになります。
また、関節(骨同士)での安定性が悪くなると、周囲の筋肉で股関節の安定性を作ろうとします。
これにより筋肉の負担が強くなり痛みを出したり、柔軟性が低下することで関節の可動域を狭めてしまう結果となります。
正しい姿勢で座る・立つ・歩けるように骨盤の前後傾を確認しながらリハビリやトレーニングをしていくことが大切です。
2.体幹と変形性股関節症
体幹の骨格は主に脊椎(背骨)、骨盤、肩甲骨、肋骨、鎖骨から構成されています。
骨盤は股関節の受け皿となる臼蓋を含んでいるため、骨盤の動きは股関節の動きに連動し、骨盤が体幹の構成骨の一つであることから股関節は体幹からの影響を大きく受けるとも言い換えることが出来ます。
股関節のポジショニングにより動作中の股関節の安定性は変化します。
股関節のポジショニングが悪いと股関節の筋肉が収縮した際に、股関節の内部でズレが起こります。適正なポジションでは筋肉の収縮は関節の安定化に寄与します。
そこから考えると体幹内部の関係性の中で骨盤のポジションが歪んでしまうと股関節の安定性も悪くなってしまうということが考えられます。
林典雄ら 整形外科運動療法ナビゲーション 下肢・体幹p15メジカルビュー社
股関節自体の治療・機能改善もとても大切ですが、股関節と体幹との関係は切り離すことが出来ません。このことからマッサージや筋膜リリースだけではなく自身で体幹を動かすことが出来なければ完治ができないことを理解していほしと思います。
体幹を鍛えることも大切ですが、まずは前屈・後屈・側屈・回旋と体幹を骨盤含めて動かせるようになることが重要です。
3.筋力と変形性膝関節症
変形性股関節症や股関節痛の際に『腸腰筋をきたえて』『横向きで寝ながら足を上げる』などのエクササイズをするように言われることがあります。
もちろん鍛えることも大切ですが、まずは筋肉がしっかりと動く滑走性(筋肉が伸びたり縮んだりをスムーズに行えるか)があるのか、体幹・骨盤・股関節の関係の中で効率的な股関節の配置になっているのかということが大切です。
理学療法24巻3号2007年3月 建内宏重ら 「股関節の病態運動学と理学療法II」p474
その2点が確保された状態でトレーニングや日常動作を行うことで、慢性的な股関節負担が減り改善に向かっていきます。
変形性股関節症の診断をされても、しっかりと自身に必要な機能を高めて、さらにからのコンディションを成長させながら改善していけると嬉しいなと思います
ご質問やご相談ございましたらお気軽にご連絡ください。
長い文章でしたが最後までご拝読いただきありがとうございました。